和牛は、香りと食感、味わいが調和した肉の芸術
和牛は生まれてから出荷されるまで、1頭1頭名前をつけて家族のように大切に育てられます。
生産者の愛情とこだわりが和牛のおいしさの源になっています。
和牛は生まれると7ヵ月から10ヵ月、子牛の生産農家で育てられ、子牛市場でセリが行われます。その後、肥育農家で700kg前後まで肥育されて出荷されます。 子牛は生まれて間もなく母乳から離乳して人工乳を与えますが、わが子のように1頭1頭手でミルクを飲ませたり、寒いときには手作りのカーフジャケットを着せたりして大切に育てています。
飼料は牧草や稲わらなどの粗飼料と濃厚飼料のほか、稲を丸ごとサイレージにしたWCS(ホールクロップサイレージ)なども給与します。 とくに稲わらの給与は、脂肪交雑や脂肪の色を白くするためにも不可欠です。
繁殖用の雌牛や妊娠牛は健康な子牛を産むために放牧が行われます。
牛肉のおいしさの要素は「食感(テクスチャー)」「味」「香り」の3つ。このうち、和牛特有のものとして「和牛香」(Wagyu beef aroma)があります。和牛香は桃やココナッツ様のコクのある甘い香りで、口の中に入れてよく嚼むと出てくる香り「口中香」(retronasal aroma=flavor)で「咀嚼香」とも呼ばれるものに属します。 この和牛香は80℃(176℉)に加熱した時に最も強く出ることが分かりました。この温度は和牛の代表的な料理であるすき焼きの最適温度と一致します。また、和牛香は1度出ると肉の中にとどまり、冷めても嚼むと出てきます。そのため、和牛は冷めてもおいしく食べられるのです。 この「和牛香」と脂肪交雑のまろやかな「食感」があいまって、最高級の味わいがつくられるのです。